はじめに
一級建築士の製図試験では、平行定規を用いた作図の他、フリーハンドによる作図も認められています。
これは、昔からそのようなのですが、ここ数年試験におけるフリーハンドの位置づけは異なってきていると感じています。
一昔前は、一部の玄人ハンド達が、フリーハンドで作図をしていたようで、フリーハンド作図は、マイノリティ of マイノリティでした。
しかし、ここ数年では、予備校が結構フリーハンド作図を教え始めたということもあって、結構普及してきています。
近年の試験傾向として、作図量が増えており、試験時の未完(ミカン、未完成の略)を防ぐ手法として、受験生に覚えてもらおうという趣旨もあるようです。少なくとも日建学院は、そういう趣旨で、カリキュラムにフリーハンド作図が1回は組み込まれています。
ミカンは、何としても防がないといけませんからね!
TACの建築士講座も、フリーハンドを少し前から教え始めています。
ちなみに、私はTACの回し者ではないです。(今のところ!)
TACの建築士講座は、個人的な感想としては、リーズナブルで結構いい感じだと思います。
受講料が安くて、講義課題が結構少ないのが特徴です。
年によっては、講義課題が結構試験問題に近い(的中!)と話題になったりしていますが、やはり講義内容を絞りに絞っているので、チキン野郎にはお勧めできません。
また、総合資格学院も一部ではフリーハンド教えていると聞いています。詳細はつかめていませんが。
さて話が逸れましたが、
かつての玄人ハンド達だけに許された特権だったフリーハンド作図法も、普通ハンドの受験生が、バシバシ使うような時代のトレンドです。
近いうち、『フリーハンドやったことがない』は、マイノリティになると予想しています。(そのうち、試験がCADになるかもしれませんが….)
そこで、今回は、フリーハンドを取り入れるためのヒントをいくつか紹介したいと思います。
フリーハンド作図の種類
フリーハンド作図には、主に下記の2種類あるといわれています。
- 時短のためのフリーハンド(定規よりは、クオリティ落ちるけどまぁいいかという図面)
- プレゼンテーションのためのフリーハンド(魅せる図面)
ちなみに私は、フリーハンド歴2年でしたが、魅せる図面の域には達してはいないけれど、まぁまぁのクオリティの図面(と言われていました)
私の場合、時短という目的が、達成できたというとちょっと微妙で、平行定規による作図と、フリーハンド作図の作図時間は、だいたい一緒くらいでした。
これについては、割と最終段階までどっちにしようか悩ましかったので、当時通っていたN学院の講師に相談しました。
「どっちでもよければ、自分の気分がノッてくるほうにしましょう」とのことだったので、
最終的に、フリーハンドのほうが気分がノッてくるからという理由でフリーハンドを選択しています。
つまり、『時短』、『魅せる』を共に達成できているわけではない『意味わからんフリーハンド』の誕生です。
フリーハンド作図のメリット
フリーハンド作図のメリットは、下記6点です。
- 作図時間短縮(図面クオリティで作図時間が調整できる)
- たのしい
- どこもで作図の練習ができる
- 平行定規作図のスピードアップにもつながる
- 製図板がなくてもできるので、身も心もフリーダム
- 本番での精神安定剤
①作図時間短縮(図面クオリティで作図時間が調整できる)
目指すべきは、速くて綺麗な図面ですが、それでもやはり、速さとクオリティは、切っても切れない関係があります。
マッハで図面を書こうと思えば、言わずもがなフリーハンドのほうが速いです。平行定規より時間調整がしやすいというのがメリットと言えると思います。
②たのしい
フリーハンド作図は考えながら、図面を書くことができます。
これが意外とたのしいのです。そして、この感覚は多くのフリーハンド経験者に支持されています。
平行定規による作図は、エスキス段階で完全に決まったプランをひたすら図面化する「作業」です。マシーンとも言えます。作業感が強く、人によっては「苦行」だったりします。
③どこもで作図の練習ができる
このメリットは大きいですね。カフェや図書館などの他、公園のベンチ、移動中など、しようと思えばどこでも作図ができるのです。
④平行定規作図のスピードアップにもつながる
これは、予備校講師談ですが、一度フリーハンドを経験した人が、最終的に平行定規による作図を選択したとしても、フリーハンドで培ったプランニングの感覚は、活きてくるようです。
久しぶりに平行定規で作図したら、腕がなまっているかと思いきや、「あれ、逆に速くない?」と、フリーハンド修行の恩恵を受ける受験生が多いとか。
⑤製図板がなくてもできるので、身も心もフリーダム
まず、製図板の持ち運びをそんなにしなくてよくなるので、身軽になります。また、製図板も長い間使用していると故障したりします。フリーハンドを習得するとこで、試験当日故障しないか。。なんて心配は不要になるのです。
⑥本番での精神安定剤
これは、本番でなかなかエスキスがまとまらない場合に、フリーハンドでマッハ作図するとしたら、あと+●分はエスキスできると、自分に言い聞かせることで、多少なりとも精神を安定させることができます。なので、
平行定規派の人も、フリーハンド作図は、一度試しておくべきなのです。
フリーハンド作図の下準備
フリーハンド作図をするにあたって、自分の特性を把握しておく必要があります。
それは、どういう角度で直線を引けば、まっすぐ線がひけるかというのを確認することです。
大抵の人は、横直線を引くより、縦直線を引く法が、まっすぐ引けます。
それとフリーハンド作図と、平行定規作図は、やはり書き方が全然違うので、場合によっては、シャーペンなどの筆記用具もフリーハンド用に見直すということです。
私のおすすめ道具は、下記の記事にも書いておりますが、フリーハンドは、ぺんてるのスマッシュです。他のシャーペンとは全然違う感覚です。
製図試験が終わった後も、スマッシュ愛はとまりません。
フリーハンド作図の方法
フリーハンド作図の方法は人それぞれです。
今回は、簡単に一般的な部分を紹介します。
平行定規に作図用紙を固定し、捨て線、柱、寸法線を書いたら、製図板から、用紙をは外します。
後は、自分の書きやすい角度になるように用紙を回転させながら、書いていきます。
断面図は、速さを重視するのであれば、定規で書いたほうが速いです。一応予備校でも断面図は、平行定規が基本と教わりました。
長い線は、フリーハンドで書くと結構時間がかかるのです。
フリーハンド作図の注意点
フリーハンド作図をやっているとかつての「フリーハンド=玄人のアソビ」という固定概念を持った人達が、『その図面は、フリーハンドではない(?)』とか、『汚い』とか『0点』とか『帰れ』とか罵声を浴びせてくる可能性があります。
そういった場合であっても奴らの声に耳を傾けてはいけません。
そういう人たちは、得てして、ちゃんと近年の試験の事情を理解されてないと思います。ここで信じるべきは、予備校というか、近年の試験をちゃんとウォッチしている人たちです。
ただ、試験に関して信頼できそうな人達に同じようなことを言われたら、ちゃんと話を聞きましょう。
あなたの図面が汚すぎる可能性があります。
おまけ
私とフリーハンドとの出会い
私とフリーハンドとの出会いは、実は、初年度受験の時です。
当時予備校では、一切フリーハンドは教えてなかったのですが、公開模試が行われた際に、たまたま横の席が、フリーハンド選手だったのです。
当時、フリーハンドで作図をする仙人のような受験生がいるらしいと噂では聞いていました。
実在するかどうかすらも、一介の予備校生には確認のしようのないもので、仙人というかツチノコ?と思っていました。
それがついに、そのカスミ喰らった男が私の前に(正確には横に)現れたのです。
最初、「板」と「ペン」と多分「消しゴム」くらいしかもっていない仙人の登場に一瞬周りが凍り付きました。
かれは一体何者なんだ。。「板」も我々が使っている「平行定規」ではなく、何も定規がついていない『本当の板』じゃないですか!!
当時は、板仙人の登場に、背中に稲妻が走ったものですが、
今となっては、彼の気持ちはよくわかります。
そして、最悪の場合「板」すらもなくてもよい、そういうタイプの仙人に私はなっていました。