はじめに
一級建築士になるためにはまず、最初に学科試験を通過しなければなりません。2020年度の試験については、下記の通り実施が決まったので、微力ながら、学科試験通過のための戦略と勉強法について記事を書いてみます。
一応、私は、製図試験にカド落ちした経験があり、学科試験に2回合格しています。そして、昨年ようやく一級建築士になりました。
ちなみに、学科試験に関しては、一定量の勉強をすれば、再度合格する自信があります。
ただし、ぶっちぎりで高得点を取るというよりかは、合格点+αくらいの点数でまぁなんとか受かるという感じではあると思います。
●直前の追い込みでなんとか合格をもぎ取ろうとしている人
●学科試験通過に不安がある人
●予備校模試結果が、試験1ケ月前で合格点より20点以上足りていない人
なお、私は、大学時代は、構造系というジャンルに属していましたが、別に構造計算が特段好きなわけでもなく、現在の仕事内容は構造にはあまり関係ありません。
このため、学科試験に関しては、特定の分野にアドバンテージがある状態ではないものと理解していただければと思います。
最近の試験傾向分析
まず、『彼を知り己を知れば百戦危うからず』という故事成語の通り、彼(試験)を知る必要がありますので、近年の試験傾向と今年度の予測について触れておきます。
私は、今年度の試験は、昨年より難しくなると、予測しています。
そもそも国交省は、下記の2つの相反する課題を抱えており、その解決ににらみながら、合格者数を調整しています。
- 一級建築士の質の確保
- 一級建築士の数の確保
今年度の受験から、受験資格に実務経験が不要となり、受験生が大幅に増えます。このため、ある程度難しくしないと、合格者数が多くなりすぎて、建築士の質に問題が生じてくると考えられるからです。
入口(受験条件)を易しくして、出口(試験)はそのままだと、単純に一気に増えすぎるので、そうはならないように難易度を調整するのではないかと私は予想しています。
もっとも、こういった国家試験は、試験制度が変わったタイミングは、合格しやすいというのが通説のようなので、世の流れに逆行した予測ではあります。
それでは、それぞれの課題と背景について、見てみます。
①については、2005年の構造計算書偽装問題、いわゆる姉歯事件に端を発して、建築士の品格がより世間から問われるようになったのが原因です。
これに伴い、一級建築士試験の難易度を上げたり、受験資格を厳格化したり、新しく「構造設計一級建築士」や、「設備設計一級建築士」などより専門性の高い資格が誕生しました。
これらの影響もあって、近年、一級建築士の受験生が減少傾向です。
試験元が、受験資格を年々厳格化していることが大きな要因だと考えられます。
どのくらい減っていいるかというと、下図1、2のような感じです。一級建築士受験の入口である学科試験については、20年前の約半数近くを近年推移していいます。
図1 一級建築士学科試験の受験者・合格者数の推移(公開データを基に著者作成)
図1から読み解けることと考察
- 受験者数は漸減
(考察)
(1)姉歯事件以降 学生の建築離れが進んでいる。(本当かどうかわかりませんが、そういう見方もあるようです)
(2)2009年度以降の受験生減少は、試験制度変更による影響大
・学科試験の免除回数が1回→2回に増えたことにより、カド落ちした受験生が学科試験を受ける数が減った
・受験資格の厳格化(実務経験の考え方が年々厳しくなってきた) - 学科試験合格率は、なるべく落とさないように調整している。
(考察)
2019年度の学科試験を見る限り、意図的に学科試験の合格者を増やしているものと思います。
学科試験の合格最低点が100点近い異例の水準でした。
これは、単純に過去10年分の過去問を解いていたら、対応できる問題が多かったというだけのようです。(つまり簡単だったと)
例年ですと、100点以上の点を取ろうと思うと、過去25年分程度の過去問を解くことが必要と言われていて、予備校のカリキュラムを一通りこなすと、だいたいそれ相当の範囲が網羅されるという仕掛けになっています。
図2 一級建築士製図試験の受験者・合格者数の推移(公開データを基に著者作成)
図2から読み解けることと
- ここ数年2019年は学科試験で多めに合格者を出して、製図試験で合格者を絞っている。
- 新試験制度(2009年)以降は、概ね4000人程度の合格者を輩出するように調整している。
こちらの図であまり有意な考察ができませんでした。もう少し古いデータがあれば、何か見えてくるものもあったかもしれません。
一方で、②についてです。
一級建築士ホルダーの年齢別分布は、図3のようになっています。
銀座で石ころを投げれば、一級建築士に当たるといわれたバブリーな時代はもうとうの昔に終わっているのです。
20代、30代の資格保有者の割合が、非常に少なく、近い将来供給不足になることを危惧して、再度資格ホルダーを増やそうとしています。
また、受験生の高齢化についても問題視されていました。そんな背景もあって2020年度にまた受験制度変更することとなったのです。
図3 一級建築士事務所に所属する建築士の年齢分布等(日経XTECHより借用)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00085/122600001/
一級建築士学科試験合格のための戦略と勉強法
さて、試験の傾向が大体わかったところで、次はどうやって勉強していくかについて説明します。
学科試験は正直高得点は不要です。合格ラインに達しさえすればよいのです。
なので、重箱の隅をつつくような問題や、最近のトレンドがわかっていないと解けない問題で点取りに行くのはあまり得策ではないと考えています。
過去10年分の過去問の選択肢について、すべて正誤判定ができれば、基本的には、合格ラインにはのってきます。
時間が許せば、それ以外の部分にも手を出して、合格の確度を上げていけばよいと思います。滑り込み合格でよければ、まずは10年分の過去問を何度もやって習熟しましょう。
余裕があれば、予備校の補助教材や模試を可能な限り解きましょう。ここまで精度高くやると、25年分相当の過去問を網羅することができ、高得点域を狙えるようになってくると思います。
基本戦略
構造と法規を得点源にする。この二つが苦手だと、学科試験は、ハードゲームです。
理由は、2つあります。
- コスパがいい科目である
- 安定的に点数がとれる
①については、1点数アップするための労力が他の科目より低いということです。
他の科目は、確実に1点取ろうとするとその周辺知識迄幅広に押さえにいかないといけませんが、構造、法規に関しては、比較的ピンポイントで出るところが決まっているので、1点アップするための労力は少なくて済みます。
まぁ法規に関しては、法令集にアンダーラインを引くという謎の修行があり、その点も加味するとコスパ悪いですが….
最低でも、8割、あわよくば満点取りたいところです。
『勉強法』まとめノート
学科試験は、基本的には、暗記がものを言います。
問題集、テキストなどに記載されている事柄を自分なりにまとめ直すという作業が記憶の定着に効果的です。
比較的持ち歩きしやすいサイズのノートにまとめて、スキマ時間に確認するようにしておけば、より良いと思います。
私はA5サイズのノートにまとめの図や表を記載して、持ち歩いていました。
この方眼ノートは、製図試験でも使えるので、かなり重宝していました。
コスパもなかなかのものです。
『勉強法』毎日勉強
仕事が忙しいと、なかなか勉強時間を確保するのが大変なこともあります。そんなときに意外といいのが、『毎日1問でもいいから問題を解く』という手法です。
言い換えれば、一日のノルマを極限まで下げてでも、ノルマ未達成を避けるということです。
まったくやらないより、少しでも前進しているという感覚が、精神衛生上かなりプラスに働いてくれます。
そして、こういうスキマ時間に覚えたものは、なかなか記憶に定着しやすいです。
きっと、プラスの感情とともに学習するので、脳が喜んでいるのだと思います。
もちろん、一日一問は、最低限のノルマなので、気力と時間があれば、どんどん勉強しましょう。
ちなみに、こういうちょっとした学習に便利なのは、やはりスマホです。基本的にだいたい携帯していると思うので、さっと取り出して、すぐ勉強できます。
このアプリが結構おすすめです。
『勉強法』語呂合わせ
これは、私個人の感覚ですが、30手前くらいから、意味のない文字や数字の羅列がなかなか覚えられなくなりました。
それまでは、語呂合わせって必要?!と思っていたのですが、必要ですね。ないとキツいです。
一級建築士用には、語呂の本がこの本がおススメです。