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【ある受験生の記録】2019年一級建築士製図試験 台風延期組の話をしよう

はじめに

2019年度の一級建築士の製図試験(2次試験)は、大荒れでした。超大型の台風19号が日本列島を直撃し、交通機関がマヒすることが懸念されたため、試験は延期になるかもしれない。。なるかもしれない。。なるかもしれない。という状況が前日まで続きました。結果、台風の影響の少ないエリアについては、予定通り2019年10月13日に”試験実施”、台風の影響が大きい、あるいはグレーなエリアは、”試験延期”という何とも不平等感のある試験となったわけです。(2013年度に沖縄だけ試験延期ということはありましたが、このようにに日本中の受験生が分断されるような出来事は初です)

2020年度の試験についても、まず、学科試験(1次試験)がコロナの影響で延期になるかもしれないと試験元から発表されています。となると、製図試験(2次試験)も、必然的に延期になり、いろいろな計画が大崩れ、モチベーションを保つのも大変だし、今年の受験生もかわいそうだなと感じます。そもそも予備校に通っていたとしても、三密活動の一環で、十分な指導を受けれていない受験生も多いと思います。そして、さらに今年度から、試験制度も変わるので、受験生に追い打ちをかけるようなCHAOS状態と言えるかもしれません。

という訳で、今年度においても、試験元、予備校関係者、受験生ともに未曾有の対応に追われるのは必至です。そこで、昨年度の受験経験者である私が、当時の試験元や予備校の対応、翻弄された受験生の一部始終を赤裸々にレポートすることで、少しでも受験生の気休めになればと思い、ペンを執った次第でございます。

試験元からの発表

私は、当時東京に住んでいて、受験地も東京でした。少し前から、今回の台風は試験に影響が出るかもしれないと騒がれており、実際に試験元から、このようなアナウンスが出ていました。

アナウンス

ずーーーとこれがまた長い間、中止や延期の可能性を示唆するものの、現時点では実施するという方針でした。

受験生の目に見える形で変化があったのが、10/11の夜 まず、実施できそうな都道府県が暫定で示されました。開始時間を遅らせての実施とのことでした。(注)下のキャプチャは、翌日のアナウンスの一部抜粋

アナウンス②

ただ、この時点では、上記以外のエリアの受験生は、試験が実施された場合に、備え、万全の準備をしなければならなかったのです。

まず試験会場までの足を用意しなければなりませんでした。公共交通機関がマヒした状態では、さすがに試験元も中止にするだろうと考えられましたが、万一に備え、リスクマネジメントを各自行わないといけませんでした。人によっては、タクシーの配車予約をしたり、試験会場近辺のホテルに前日入りしたり、いろいろでした。

万一、交通機関は運行したとして、間引き運転や、ダイヤの乱れでゲキ込みなどとなると、試験会場に到着するまでに相当精神をすり減らすことになるのは、目に見えています。

私は、仕方なく、前日、試験会場の近くのホテルに泊まることを選択した。背中にカドバンという製図板を背負った人間は、とにかくベストを尽くすのです。こと『試験を受ける』という行為に関しては。。。

いざ尋常に

そもそも、かつてない規模の台風が上陸するということで、結構世間はザワついていました。停電になるかもしれないという話も出ていたので、試験の前日までに、とにかく急ぎでいろいろと防災用の物品を備えました。モバイルバッテリー、ろうそく、非常食、それから、窓ガラスの飛散防止のために養生テープを買ったりしました。近所のホームセンターには、物品を買いあさる人々を取材するため、テレビ局の取材陣が出入りしていました。

そして、いざ尋常に、、、電車が動いている前日に、試験会場付近のホテルめがけて出発したのです。

ただ、出発するのが早すぎて、ホテルのチェックイン時間の随分前だったので、近くでやっていた喫茶店(名曲・珈琲 麦)に行って、試験勉強をすることにしました。場所は、本郷。東大の本郷キャンパスの近くという立地柄、勉強には最適な全能開花的なクラシックが流れていました。私はその中で、クラシカルな調べと、非日常感から、それはもう集中の極みに達していました。勢いあまって合格寸前まで気持ちが高ぶったその時、店員から、「今日は店は早めに閉めるのでそろそろ…..(出てくれ)」と店に言われたので、しぶしぶ店をあとにしました。

この店がその界隈では唯一営業しているカフェだったので、居場所を失った私は、ホテルにとりあえず向かって、ロビーで待たせてもらうことにしました。チェックインは、15時からだったので、しばらくロビーで待っていると、フロントのご厚意で、ちょうど14時頃に客室に入れてもらうことができました。

そして、客室について、一息ついた後、試験元から新たな情報が出ていないかチェックしたところ、、、

アナウンス③

 

でてましたね。ジャスト14時に出ているようでした。。。。

そして、私、ホテルにチェックインしてしましましたね。。。

ただ帰るわけにもいかなかったので、圧倒的虚無感に打ちひしがれながら、その日は、なくなくホテルで「謎の宿泊」をすることになります。

夕方くらいからは、特に雨風が激しくなって、外を出歩くのは、危険そうだったので、ちょっと、早めに近くの中華料理屋に行って、無味無臭のタンタンメンを流し込み、足早にホテルに戻りました。

ホテルにいても客室にいるしかなく、荷物も、勉強道具くらいしかありませんでした。さすがに、いつあるか分からない試験のために、今日全力を尽くせるほど、自制の利いた人間ではないので、適当にテレビをみたり、同じように前日にホテル入りした会社の同僚に連絡をしたりして時間をつぶしました。同僚は別のホテルでしたが、そのホテルは受験生があふれかえっていたようで、同じ境遇の者同士、インスタントな友情が芽生えたりもしていたようでした。

延期か...すべては、この日に照準を合わせて、仕事も調整し(後ろ倒しできるものは、極力後ろ倒し)、やってきたのにこのざまか。再試験の日程によっては、ベストを尽くせるかどうかわからない、、そんな一抹の不安を抱きながらも、緊張感から解放されホッとしたのか、すっと眠りに落ちました。

一級建築士製図試験当日(10/13)

朝早起きして、また昨日のカフェ(名曲・珈琲 麦)でモーニングをしました。そして普段あまり来ることがないので、東大周りを散策してみました。

 

東大赤門

基本的にこの日はさすがに誰もいなかったですね。

歩行者用信号機が90度曲がっていました。台風の爪痕ですね。

信号機

その後、人気のカレーショップ(ダージリン 本郷店)で昼ご飯をとって、家路につきました。この日も何かする気にもなれず、そして、何をしたかも覚えていません。きっと何もしなかったんでしょう。

台風延期から再試験日まで

しばらく、試験日が決まらないまま、宙ぶらりんの状態でした。10/13の試験の問題を入手して、解いてみたり、むりやりモチベーションを保とうと、施設見学(設計課題のテーマの美術館)に行ってみたりしているうちに時間が過ぎていきました。。一度クールダウンしたエンジンにまた火を入れるため、むりやり何かをしようとしていました。無駄にアートな日々を過ごしていました。

アート①

 

インスタでフォローしていた勉強垢の中には、試験が終わった後のご褒美として、海外旅行の予約をしていた人が何人かいたようでした。試験が終わったわけではないけど、キャンセルするわけにもいかない、そんな何とも複雑な気持ちで旅行に行っているのを横目に見ていましました。

通っていた予備校(日建学院)からは、試験が終わるまで、サポートするので安心して大丈夫と言われていたので、気持ちは幾分か楽でした。1週間くらいして予備校から招集がかかったので、予備校に向かったところ、翌週から試験日まで、無償で週一回演習型の講義を行い、しかも自習室も開放するという太っ腹な対応ということがわかりました。

ただこの時点では、再試験日程は、12月上旬ごろの予定という情報がうっすら入っていた程度で、まだぼんやりとしていました。

もう一つの大手予備校の総合資格学院は、追加講習は、8万円だとかそういう話が聞こえてきていたので、つくづく日建学院でよかったと思いました。(総合資格ってオプションの神?!)

試験日程について、いち早く情報をキャッチしていたのは、ビリケツ君でした。どうも、試験元が建築士会経由で大手建設会社の上層部と日程の調整をしたようで、その情報が下までおりてきたようでした。

10月下旬には、正式に再試験日が決定しました。そこからは、予備校をペースメーカーに使いながら、試験まで一直線でした。このタイミングで完全に独学というのはさすがに酷でモチベーションの管理が難しいし、何をやればいいのか分からず、路頭に迷っていたかもしれません。同志がいたというもの大きいです。自習室で一緒に勉強する仲間がいたのは、気持ちの支えになりました。

再試験当日

再試験の会場は、立教大学でした。割り当てにもよりますが、私の会場(教室)は、ハズレでした。机は小中学校でよく使うタイプの、一人かけのミニマムな机を二つ合体させて使うというもので、ちょっとつかいづらかったです。さらにトイレへの距離もかなり遠かった。。。

例年試験の時期は、季節の変わり目。試験が終わると、あたりはうす暗くなっていて、ちょっと肌寒く秋の訪れを感じるのが定番でしたが、今回に至っては、もはや冬なので、まっくら、かつ、イルミネーションでした。

立教

クリスマスツリー

この日は、試験会場が散り散りになった同じ予備校の同志と、予備校周辺で落ち合い、居酒屋で飲みながら、試験の解答速報(youtubeのLive配信)を見て盛り上がりました。

さいごに

現時点では、試験元は、6/上に今後の試験の延期等の方針を出すとアナウンスしているようです。なるべく早く方針を出してくれることを祈るのみです。受験生は、いろいろな都合でかき乱されて、大変なことになりそうなので、なるべくペースメーカーとなるものを作ったほうがいいです。最終的には、自分ひとりの戦いですが、予備校であったり、同志であったり、支えになってくれるものには、もたれかかったほうがいいこともあります。

ちなみに、多くの人が仕事をしながら受験する資格ですので、あたり前ですが、仕事との両立が前提です。かなりしんどいと思います。(しんどかったです)

余談ですが、下記の記事で、試験(10/13)の直前に、私に文句を言ってきた上司は、

延期が決まった時

「よかったなー、勉強する時間ができて。これからぐんぐん伸びるよ」

合格した時

「いやー、絶対受かるとおもってたよ」

と、のたまいました。随分と調子のいいおとこです。

2019年度 一級建築士試験 合格後の振り返り

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