はじめに
一級建築士の前半戦は、なかなか勉強することが難しい期間です。課題が発表されてからしばらくは、なかなか勉強するためのネタが出そろわないのです。
そんな期間であっても、着実にタスクに取り組むためには、10月の本試験までのスケジュールを押さえておく必要があります。
スケジュールは、予備校に通っていれば大体最初に教えてもらってるから大丈夫と思うかもしれませんが、本当にそうでしょうか?
そのスケジュールは、予備校のフレーバーのかかったスケジュールかもしれません。受験生が押さえておくべきスケジュールはまた別にあると私は考えています。
もちろんそういった情報は、予備校の講師の雑談などから、把握できることもあると思いますが、あんまり声高らかに予備校から発せられることはないと思います。私の経験上の話ですが。
「本当に大切な情報は常に囁かれているものです(笑)」
本試験までの試験スケジュール
本試験までのスケジュールは、私の長年の経験から、以下の4つの期間に分類できると考えています。
- 期間① 7月下旬~8月中旬(予備校課題作成期)
- 期間② 8月下旬~9月中旬(課題充実期)
- 期間③ 9月中旬~9月下旬(課題調整期)
- 期間④ 10月上旬~試験日(試験問題予想期)
この分類は、オリジナルですが、長年の情報収集の結果なので、あながち間違っていないです。
一番注力すべき期間は、期間3の課題調整期と考えています。好都合なことに例年シルバーウィークと重なっています。業務の調整が可能であれば、この辺りで有給休暇などの投入も検討したいところです。
それでは、それぞれの期間の特徴を説明します。
期間① 7月下旬~8月中旬(予備校課題作成期)
はっきり言うとことの期間は、なかなか情報が出そろっていないので、勉強が進めずらい時期です。当年度生は、ひとまず、作図練習をひたすらするような時期ですが、過年度生からすると、勉強したいけれど、コスパの高い勉強ができず、ムズムズする時期かもしれません。
・施設見学(できれば)
・過去問収集・分析
・自分にあった製図道具を探す
・その他弱点補強 (特に過年度生)
作図練習
作図練習については、当年度の課題を反映した予備校等の課題、あるいは、類似課題の過去問(の予備校の回答 試験元から回答例は、トレースに適してないと思います)を入手して、1/400のエスキスに書き直し、エスキスから、1/200の作図を行うという作業を繰り返し行います。
作図時間の短縮は、トライ&エラーで、作図方法を試す、時間を測るの連続で、作図工程を細分化し、それぞれ最善の方法を模索していく作業です。当年度生は、この時期は、エスキスでいいプランニングができるかどうかはあんまり意識しなくても大丈夫です。トレースを繰り返すことで、多少エスキス力が上がってきます。(基本的には) 作図の練習については、ある種『身体性』がある学習で、トレース作図による学習を「線を感じる」というふうに表現する人もいますが、まさにその通りだと思います。理屈ばかりではなく、実際にマネすることで、『型』を覚えることができるのも事実です。
(とりあえず今回はこの程度で、詳細は割愛)
施設見学について
この時期にやるべきことは、当年度生 過年度生によらず、『施設見学』があります。
ただ、施設の特性や、住んでいる地域によって難しければ、無理して行わなくてもよいと思います。
大手予備校に通っていたら、9月頃になると、実例建物の紹介映像を授業中に見ることができると思います。
また実物の建物をたくさん知っておいたほうがいいのは確かですが、私の経験上それが試験当日プラスに働いたことはありません。
また、施設見学で注意しないといけないのが、『実物の建物と試験で求められる試験上の理想の建物は違う』ということです。
『試験で求められるモノ』という色メガネで実物の建物を見た場合、良くない事例は、山ほどあるのです。
よく予備校の講師が言うセリフに、以下のようなものがあります。
『試験と実務は切り離して考えてください』
『実際にはそういう建物はあるけれど、試験上はそういいう計画はやめてください』
また、一方で、こういうプランニングをしていいのかどうか、講師に質問すると、
『そういう建物たくさんあるし、いいんじゃない?』
という回答があることも多々あります。
一見矛盾するようですが、この辺りの領域はファジーで、かつ、少しばかり実例を見ても身に付かないものなのです。
そういう判断が分かれるような領域で勝負を仕掛けるのは、試験上は得策ではないので、よほど腕に覚えがある人以外は、やめたほうが無難です。
過去問収集
過去の類似課題のエッセンスの大部分は、予備校が作成する課題の中にうまい具合にちりばめられています。
ただ、そうだったとしても、課題分析は重要です。
過去、総合資格のトップ講師の講習を受けたことがあります。その時の教えが下記です。
子曰く、「過去問=最高の教材!やらないなんてどうかしている。。。」
子曰く、「落としどころは、過去問のリフレイン」
子曰く、「過去問はながめるだけでなく、少なくとエスキスまでやること!」
この時期から過去問分析ができる人というのは結構学習が進んでいいると思いますが。余裕があれば、やってみましょう。特に過年度生。
少なくとも、問題は入手はしておきましょう。
一級建築製図試験の参考過去問(2020版)
□類似過去課題
h27市街地に建つデイサービス付き高齢者向け集合住宅(基礎免震構造を採用した建物である。)
h23介護老人保健施設(通所リハビリテーションのある地上5階建ての施設である。)
h11高齢者施設を併設した集合住宅
□参考過去課題
h25大学のセミナーハウス
h16宿泊機能のある「ものつくり」体験施設
自分に合った製図道具を探す
これについては、こちらの記事にまとめていますので、参考にしていただければと思います。
その他弱点補強
これについては人それぞれですが、要点記述の全課題共通的な内容を勉強したり、レタリングの勉強したり。。。いろいろです。
共通的に言えるのは、この時期はまだ当年度課題に対する情報量が少ないので、課題に依存しない共通事項について勉強をするのがいいということです。
期間② 8月下旬~9月中旬(課題充実期)
この時期になると、各予備校も当年度の課題に対応した教材が充実してきます。勉強もやれる範囲が広がってきて、結構予備校の宿題をやるのも大変にはなってきます。
とにかく、多少、馬車馬感が出ても、やりまくりましょう。特に、当年度生は。
私は、初年度受験の際、8月中旬くらいまであまり勉強しておらず、講師に、『そろそろ物理的に無理だよ?』
といわれた記憶があります。学科試験で若干燃え尽きてしまった人も、この時期までに自分を奮い立たせることが出来なければ、当年度受験はあきらめましょう。
期間③ 9月中旬~9月下旬(課題調整期)
各大手予備校と試験元が例年9月上旬くらいに密会(打合せ)をするといわれています。これは、どうもマジのようです。
変な話ですが、合格率は大体4割と決まっているので、あまりにも突拍子のない試験問題を出してしまって、結果、4割のライン引きができないと困るわけです。
また試験の意義を考えると、その4割のライン引きというのが、合理的なものでなければなりません。ある特定の知識がないものは、不合格、あるものは合格というようなものであってはならないのです。
そのため、試験元は予備校でどんな課題をやっていて、どの程度の問題であれば、ちょうどよくライン引きが出来そうか、探りを入れるのです。
それと、合格者が特定の予備校に集中するもの不公平感があるので、このくらいの時期から、独自路線で課題を制作していた予備校が、ジワジワと課題のトーンを寄せてきます。
過年度生は、何となくわかると思いますが、同じ予備校でもなんか変に傾向が変わることがあります。アレです。
この辺りの時期の問題を中心にやりこむのが一番コスパは高いと思います。有給休暇などが採れる場合は、このくらいの時期にちょっと入れこむといいと思います。
そして、私は、この辺りの予備校に通っている人たちが知らず知らずのうちに享受している情報をタイムリーに入手することができれば、過年度生は、独学も可能と考えています。
期間④ 10月上旬~試験日(試験問題予想期)
直前期になると、どこの予備校も大抵予想問題を作ったり、直前講習をやったりします。
私の経験からすると、この辺りの予備校が当てに来ている問題が、当たることはまずないです。当たったとしてもフェザータッチくらいなもんではないでしょうか。
特にこの時期になると、色々な予測情報が飛び交いますが、あんまりそういった情報を集めに行っても意味がないです。
合否を左右するのは、9割がたそういうものではないからです。
直前期は、淡々と自分に足りないと思われることを補強してく作業に没頭することをオススメします。
直前講習は、『行かなきゃ落ちる(不合格)』というレベルで予備校からお誘いがあるかもしれませんが、
『人があつまらないと予備校の利益率が落ちる』の間違いである可能性についてもフェザータッチしておきます。