はじめに
『製図試験は情報戦』といわれることがあります。
インターネットの普及で誰でも手軽に情報発信できる時代になったので、製図試験に関する情報も多すぎで逆に困惑している受験生もいるのではないかと思います。
かくいう私も、時々、一級建築士製図試験に関する情報(というかほとんどネタですが)を発信してるわけですが、それは、たまたま長い受験生活を送ってしまったため、無駄に蓄積された情報を解き放っているだけのものです。当の本人は、正しい可能性が高いと思っていますが、100%ウラがとれているわけではないですし、誰にも当てはまるような有益な情報でもないと思っています。
しかし、この状況は予備校の講師であろうと、他の合格者であろうと、情報精度の『高い』『低い』はあるにせよ、状況は変わらないのです。
受験勉強期間は長いようで、あっという間です。無条件で受け入れてはダメで、信頼できるかどうかよく見極める必要があります。
時間は短いので、ある時には大胆に情報を絶つということも必要だと思うのです。
合格者の話は信頼できるか
私が、試験勉強中に読んだ本の中に、下記の「忙しくても資格試験に受かる人といつも落ちる人の勉強法」という本があります。
著者の鬼頭政人氏は、弁護士で、「資格スクエア」(オンラインで資格対策を行うサービス)の代表者でもあります。この本は、下記の4編から構成されていて、それぞれのセクションで受かる人と、落ちる人を比較しています。建築士試験に特化したものではないですが、読み物としても面白いので、受験勉強のお供におすすめです。
- 心構え編
- 計画・マネジメント編
- 生活習慣編
- 勉強テクニック編
さて、この本の心構え編で下記の項目があります。今回のテーマに関連する部分ですので、引用いたします。
タイトル:受かる人は、合格経験者を疑う。落ちる人は鵜呑みにする。
先生や合格経験者は、教祖でも神でもありません。ただの先輩であり、平気で間違ったことも言いますし、助言が必ずしもジャストフィットするとも限りません。ましてやギリギリの点で受かった合格者などは、あなたとほぼ大差はないのです。そんな根拠の薄いアドバイスを金科玉条のように崇めるほうが不自然です。
合格者の中には、正解は我にあり!と言わんばかりの言い口の人もいますが、たまたま受かっただけの人かもしれません(検証の余地はありませんが)ので、手放しに信用してはいけません。
特に、条件違反などで、バッサリと一発不合格になった人の割合が高い年度の合格者は、相対的に「これでよく合格できたものよ」というレベルの人(例年だと不合格になりそうな人)が混じっている可能性が高めかもしれません。
「勝てば官軍 負ければ賊軍」といいますが、合格者は、合格してるんだから自分が正しいと思っている節は多少なりともあると思います。
それと、これは有名な話ですが、人間脳内では、記憶は美化されるようになっています。言い換えれば、都合の悪いことは記憶から抹消されるように人間の脳はできているのです。そういった観点からも、合格者が発する情報=絶対ではないと言えるでしょう。
一方で、無益な情報ばかりかと言うと、決してそんなことはないと思うのです。エンタメ的なものから、具体的な試験内容に関するものまで有益な情報はたくさん出回っていると思います。
情報を見極めながら、うまく付き合いたいものです。
予備校講師は信頼できるか
合格者の信頼性の話は、予備校の講師の信頼性にも通じるものがあります。
予備校の講師は、最低限「一級建築士」であり、「試験の合格者」ではあります。
一方で、必ず信頼できるかというと、そういうわけではなく、特に新米の講師なんかは、場合によっては、試験に関して、自分と同じか、あるいはそれ以下ということもなくはありません。某学校では、合格翌年度から、いきなり講師デビューというのも多いようです。また、講師によって、指導内容が異なり、その内容が相反するということもままあります。
予備校講師の常套句として、下記があります。
「(特に過年度生にむけて)今まで学んだことは一旦忘れて、ここで教えることを素直に吸収してください。それが合格の近道です。」
レクチャをスムーズに進めるために、まず『私は(試験における)神である』と宣言するところから始まるのです。
『神の創り給うた偶然の産物(まぐれ合格者)』という可能性もゼロではありませんが。
しかし、予備校の講師は、不明点は、複数の講師で検証してからアドバイスを返してくれることが多いです。
また、講師になるにあたって研修のようなものを受けている(ハズな)ので、一定の信頼性があると考えられます。
一番信用できない人達
それは大昔に建築士の資格を取得した方で、特に最近の試験について、何の知見もない人たちです。
こういう人たちに限って、結構アドバイスをしたがる傾向にありますが、話半分に聞いたほうが良いと思います。
ただ、これは、あくまでも、建築士の試験と、実務を切り離した場合の話です。
実際には、必ずキレイサッパリ分けられるものではないので、参考になりそうなものは取り入れるというスタンスがよいと考えます。これは、建築士の勉強によらず、人から何かを学び取るときの基本だと思います。
情報選別法
あんまり検証ばかりしても製図試験の勉強期間というのはあっという間なので、具体的に受験生はどうすべきか考えましょう。
私のおすすめは、「マイルールを作って、ルールから外れたものは一旦除外する(信用しない)」です。
マイルールの例
- Aさんの言うことは、まず一旦信じてみる。
- Bさんの言うことは、かならず別の人にも確認を取ってみる。(確認が取れなければ一旦除外)
- Cさんの言うことは、よく検証する。(怪しそうであれば、一旦除外)等
こので言うAさん、Bさん、Cさんは、リアルで会う人かもしれませんし、ネット上の人かもしれませんし、本の著者かもしれません。
大抵の場合は、Aさんには、少なくとも予備校講師が該当することになると思います。
予備校に通っているにも関わらず、担当講師がAさんのように信頼できなければ、相当つらいです。どこかに信頼できる人を探しましょう。
結局何が言いたかったかというと、情報を無条件に取り入れると、振り回される可能性が出てきて、『振り回されると負け』ということです。